今回は行列の中でもよく出てくる少し特殊な行列たちについて解説していきます。
特殊と言っても難しいものでは無く、面白い性質を持った行列たちばかりでなので楽しみながら見ていきましょう!
行列の世界で0や1を表すゼロ行列・単位行列
まず紹介するのがゼロ行列と単位行列。
いったいどのような行列なのでしょうか?
ゼロ行列
すべての成分が0であるような行列をゼロ行列と言い、\(O\)と書きます。
例えば3×4のゼロ行列は以下のように書きます。
$$\boldsymbol{O} = \left[
\begin{array}{rrr}
0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array}
\right]$$
目次
対角行列・単位行列
単位行列の前に、まずは対角行列について解説しておきます。
対角行列とは、このように対角成分以外がすべて0の行列のことを言います。
そして、\(a_{11}\)~\(a_{33}\)を対角成分と呼びます。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
a_{11} & 0 & 0 \\
0 & a_{22} & 0 \\
0 & 0 & a_{33}
\end{array}
\right]$$
では、単位行列について見ていきましょう。
単位行列とは対角成分がすべて1で、それ以外の成分がすべて0の行列のことを言い、\(E\)と書きます。
$$\boldsymbol{E} = \left[
\begin{array}{rrr}
1 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1
\end{array}
\right]$$
単位行列は先ほどの対角行列の特殊なものと考えると分かりやすいですね!
- 対角成分以外が全て0の行列が『対角行列』
- 対角成分以外が全て0かつ,対角成分が全て1の行列が『単位行列』
その他の特殊な行列を見てみよう
さて、ここからは他の特殊な行列について見ていきます。
これから紹介するのは以下の行列たち。
- 正方行列
- 転置行列
- スカラー行列
1つずつ見ていきましょう!
正方行列
行と列の数が等しい行列、つまり\(n\)×\(n\)行列のことを正方行列と言い、\(n\)次正方行列と呼びます。
以下に4次正方行列の例を示します。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
-1 & 20 & 3 & 5\\
4 & -5 & 600 & 11 \\
7 & 8 & -9 & 122 \\
2 & 44 & 23 & 1
\end{array}
\right]$$
転置行列
行列\(A\)の行と列を入れ替えた行列を行列\(A\)の転置行列と言い、\(A^{\mathrm{T}}\)と書きます。
例えば、\(A\)が\(n\)×\(m\)行列ならば、転置行列である\(A^{\mathrm{T}}\)は\(m\)×\(n\)行列となります。
少し分かりにくいので、具体的な行列で見ていきましょう!
例として以下の行列を考えます。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
-1 & 20 & 3 \\
4 & -5 & 600 \\
\end{array}
\right]$$
この行列の転置行列は以下のようになります。
$$\boldsymbol{A^{\mathrm{T}}} = \left[
\begin{array}{rrr}
-1 & 4 \\
20 & -5 \\
3 & 600
\end{array}
\right]$$
この例を見ると1行目が1列目と、2行目が2列目と置き換わっていることが分かりますね!
スカラー行列
対角成分がすべて等しい対角行列をスカラー行列と言います。
例えば以下のようなものがスカラー行列です。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
5 & 0 & 0 \\
0 & 5 & 0 \\
0 & 0 & 5
\end{array}
\right]$$
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
-1 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 \\
0 & 0 & -1
\end{array}
\right]$$
まとめ: これらの特殊な行列はよく出てくる
たくさんの特殊な行列を紹介してきました。
ここでもう一度それらを振り返ってみましょう!
- 単位行列‥‥対角成分がすべて1でそれ以外の成分がすべて0の行列
- ゼロ行列‥‥すべての成分が0の行列
- 対角行列‥‥対角成分以外の成分がすべて0である行列
- 正方行列‥‥行と列の数が等しい行列
- 転置行列‥‥行と列を入れ替えた行列
- スカラー行列‥‥対角成分がすべて等しい行列
これらの行列は線形代数の中でもよく出てくる行列たちばかりなので、それぞれの特徴をしっかり押さえておきましょう!