さて、今回は余因子と余因子展開について見ていきましょう。
少し複雑そうな感じがしますが、イメージ的には数字遊びに近い内容です。
今まで扱ってきた行列式や逆行列とも関連してくる内容なので頑張って学んでいきましょう!
余因子ってなんなの?
まずは余因子がどういうものなのか、というところから。
ざっくりと言えば、もとの行列の行と列を一つずつ抜き取った小さな行列の行列式にプラスまたはマイナスの符号を付けたもの。
例えば次のような行列があったとして、その余因子を考えてみます。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
-1 & 2 & 3 \\
4 & -5 & 1 \\
1 & 3 & 2
\end{array}
\right]$$
余因子の計算法は?
余因子の計算方法のステップは以下の通り。
- もとの行列からある行と列を抜き取る
- 抜き取った行列の行列式を計算する
- 最後に行列式の値にプラスまたはマイナスを付ける
さて、最後にプラスかマイナスを付けるのですが、どちらを付けるのか決めるためにはルールがあります。
それがこちら。
- 最初に抜き取った行の数と列の数の合計が偶数ならプラス
- 最初に抜き取った行の数と列の数の合計が奇数ならマイナス
今回の例では1行目と2列目を抜き取ったのでその数の合計は3。
よって奇数なのでマイナスを付けます。
今回の例では1行目と2列目を抜き取って余因子を計算しましたが、1行目と3列目、2行目を2列目などを抜き取っても余因子を求めることができます。
いろいろな組み合わせを試してみて余因子の計算方法を練習してみましょう!
余因子展開と行列式
先程求めた余因子ですが、これを使うともとの行列の行列式を求めることができるんです!
例えば次の行列の行列式を求めたいとします。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
-1 & 3 & 3 \\
0 & 0 & 2 \\
2 & -4 & 5
\end{array}
\right]$$
前回紹介したようなたすき掛けの方法を使えば行列式を求めることはできますが、3行3列の行列式は求めるのが少し複雑でしたよね。
では余因子を使って求めるとどうなるか見てみましょう!
余因子を使って求めていくには余因子展開というものを使って行列式を違う形に書き換えながら求めていきます。
例えば、2行目に関する余因子展開を使えば3×3の行列式もこのような形に書き換えることができるんです。
ではこの行列の行列式を余因子展開を使って求めてみましょう。
今回は例として2行目に関する余因子展開をしていきます。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rrr}
-1 & 3 & 3 \\
0 & 0 & 2 \\
2 & -4 & 5
\end{array}
\right]$$
余因子展開を使うと計算式がかなり簡単になりましたね!
では、余因子を計算していきます。
これでもとの行列の行列式を求めることができました!
こうしてみると、たすき掛けのときよりも比較的ラクに計算することができましたね。
このように余因子展開を使った行列式の計算方法は行や列に0を多く含む場合に効果的なので覚えておきましょう!
まとめ: 余因子を使えば計算が楽になる!
さて、今回は余因子と余因子展開について見てきました。
- 余因子はもとの行列の行と列を一つずつ抜き取った小さな行列の行列式にプラスまたはマイナスの符号を付けたもの。
- 余因子展開を使えば行列式をラクに求めることができる!
今回の内容は行列式を求めるときに有効だし、逆行列を求めるときにも有効なのでしっかりマスターしておきましょう!