今回は対角行列と対角化について見ていきます。
対角行列については線形代数の初めの方で学んだことがある方も多いのではないでしょうか?
今回はそこからさらに進んで対角化というものを固有値と固有ベクトルに絡めて学んでいきます。
そこまで複雑な内容ではないので安心して付いてきてください!
対角行列って何?
まずは対角行列のおさらいから。
例えば次の正方行列たちは対角行列になります。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rr}
-1 & 0 \\
0 & -5 \\
\end{array}
\right]$$
$$\boldsymbol{B} = \left[
\begin{array}{rrr}
0 & 0 & 0 \\
0 & 3 & 0 \\
0 & 0 & 5
\end{array}
\right]$$
$$\boldsymbol{E} = \left[
\begin{array}{rrr}
1 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1
\end{array}
\right]$$
では今回の本題である対角化について見ていきます。
まず対角化とはどのようなものなのでしょうか?
なぜ対角化するの?
対角行列を作り出すことを対角化と言いますが、なぜ対角化するのでしょうか?
実はそれには理由があるんです。
例えば以下の行列\(A\)を対角化すると行列\(B\)になります。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rr}
7 & -6 \\
3 & -2 \\
\end{array}
\right],\boldsymbol{B} = \left[
\begin{array}{rr}
1 & 0 \\
0 & 4 \\
\end{array}
\right]$$
この二つの行列は同値であり、ある意味で同じと見なすことができます。
となると、行列\(A\)より対角化された対角行列\(B\)の方が扱いやすいですよね。
他にも対角化を使えば\(A^{\mathrm{n}}\)の計算がとても楽になるというメリットもあります。
先ほどの二つの行列を例にとれば、行列\(A\)を\(n\)乗するのは大変ですが、行列\(B\)なら簡単に\(n\)乗することができます。
- 行列\(A\)より同値である対角行列\(B\)の方が扱いやすい
- \(n\)乗計算がとてもラク!
対角化を求める手順
対角化を求める際には以前の記事で勉強した固有値と固有ベクトルを使っていきます。
この内容が曖昧な人は一旦立ち止まって固有値と固有ベクトルについてしっかり押さえるようにしてください!
では対角化の手順について実際に見ていきましょう!
まず対角化の条件ですが、対角化はすべての行列に対して行えるわけではないんです。
この条件を満たした上で、次の手順で対角化をしていきます。
- 行列\(A\)の固有ベクトルを並べた行列\(P\)を作る
- 逆行列\(P^{\mathrm{-1}}\)を求める
- \(P^{\mathrm{-1}}AP\)を計算する
手順としてはたったこれだけ。
実際にやってみよう
今回は次の行列を対角化してみます。
$$\boldsymbol{A} = \left[
\begin{array}{rr}
2 & -2 \\
-1 & 3 \\
\end{array}
\right]$$
では先程の手順どおりに進めていきましょう!
この行列は\(2×2\)行列で固有ベクトルが2つであることから先程の対角化の条件を満たしていますね!
では次に行列\(P\)の逆行列である\(P^{\mathrm{-1}}\)を掃き出し法を使って求めていきます。
逆行列を求める手順はこちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください!
まずは行列\(P\)と単位行列\(E\)を並べます。
ではこの行列を簡約化していきましょう。
では最後に\(P^{\mathrm{-1}}AP\)を求めます。
求まった対角行列を見てみると対角成分が行列\(A\)の固有値になっていることがわかりますね。
このように対角化によって求めた対角行列の対角行列は行列\(A\)の固有値になるという面白い性質があります。
この性質は対角化の検算としても使える面白い性質です。しっかり覚えておきましょう!
まとめ: 対角化はよく使う必須項目
- 対角化とは行列\(A\)の固有ベクトルからなる行列\(P\)を使って対角行列を求めること
- 対角化は\(B=P^{\mathrm{-1}}AP\)で求められる
- 求まった対角行列の対角成分は行列\(A\)の固有値になる
対角化といっても使っている内容は固有値や固有ベクトル、逆行列など今までの組み合わせ。
今まで学んだことがしっかり積み上がっていればスムーズに理解できるはずです。
大切な内容なのでしっかり理解しておきましょう!